ローゼンタールのフィギュア、特に20〜30年代のものは、とてもモダンでセクシーで素敵です。コレクションとはとても言えませんが、私のお気に入りたちをご紹介します。
原則として、制作年代(モデルナンバー)順に並べています。
あまり写りが良くなくて恐縮ですが、写真をクリックすると新しいウィンドウが開き拡大画像が見られます。(拡大画像画面のウィンドウを閉じて戻ってください)
Rosenthal "Marabu" Tray
Model#57、J. Fischer作、1910年、H13cmマラブ(Marabu、アフリカに生息する鳥であまり動かないといわれる)をあしらったトレイ。ペントレイでしょうか?
当時このマラブはいろんな窯で造られています。ローゼンタールでは、Hans Kuesterもマラブのブックエンドを制作(Model #1011)していますが、こちらはより写実的な造形・彩色です。
作者のJosef Fischerは、クワガタ虫をあしらったベースやトレイなども制作しています。
Rosenthal "After The Bath"
Model#202、B. Boess作、1913年、H22cm湯浴み後の女性の立ち姿が美しいフィギュアです。
作者のBerthold Boessは1910〜20年代ローゼンタールの主力作家の一人。釉下彩による絵付けは、コペンハーゲン窯から招聘されていた絵付け師Julius V. Guldbrandsen。Guldbrandsenは当時釉下彩作品のほとんどを担当していたようです。
全体的にやや斜めに傾いた姿勢なのですが、骨格や筋肉の付き方などの造形がしっかりとしているのでどの角度から見ても安定して崩れたところがありません。
Rosenthal "Frog King"
Model#233、L. Rauth作、1927年(First Made 1913)、H12cmグリム童話「カエルの王様」を題材にした作品で、魔法でカエルに変えられてしまった王とその魔法を解くことになる王女のフィギュアです。
ヘアスタイル、ドレスなど当時の流行が伺われる作品。次の"Ariadne"とは作者も違いますが、とてもよく似ています。モデルとなった女性が同じなのかも?
Rosenthal "Lovers"
Model#295、R. Aigner作、1913年、H25cm手を取り合いキスをする恋人たちのフィギュアです。
ロダンを彷彿とさせる情熱的なポーズ、造形に女性のしなやかさ柔らかさと男性の力強さ優しさが感じられます。髪と女性の下の布のみに釉下彩が施され、良いアクセントとなって全体を引き締めています。
作者のRichard Aignerには"Eros"と題する同様の恋人たちフィギュアがあり、こちらも是非手に入れてみたいです。
Rosenthal "Ariadne"
Model#346、A. Caasmann作、1914年、H16cmギリシャ神話のクレタ王ミノスとパシパエの娘、亜麻色の髪の美しい王女アリアドネのフィギュアです。
広がったボブの髪や顔立ちは当時ドイツの工芸デザインをリードしていたユーゲントシュティルの芸術家集団ウィーン工房(1903年設立)の影響が表れています。
Rosenthal "Nubian Dancer"
Model#358、B. Boess作、1922年(First Made 1914)、H27cmアールヌーボーの残り香が漂うフィギュアです。スカート部分の絵付けが美しいです。
この頃までのローゼンタールのフィギュアは絵付けが少なく、私としては独創的な方向性は見えるもののそれほど個性的ではないような気がします。しかし、この頃以降から技術の向上に伴って、本領を発揮していきます。
Rosenthal "Nurse"
Model#382、B. Boess作、1914年、H21cmこのフィギュアが製作された年1914年に第一次世界大戦が勃発し18年まで続きます。
この時期には、この従軍看護婦や兵士といった戦争をモティーフとするフィギュアが作られました。マイセンやKPMなどでも同様に戦争モティーフの作品が作られていますが、愛国と戦意高揚を目的としたのでしょうか。
第一次大戦中の作品には、ドイツ帝国皇帝ヴィルヘルム2世によって制定された鉄十字勲章のマークが窯印と共に入っているものも多いです。Rosenthal "Snake Charmer"
Model#193(Bahnhof工房)、R. Forster作、1926年、H20cmローゼンタールの数ある蛇使いフィギュアのなかでも、最初期に入るものです。釉薬の濃淡で布の質感だけではなく、ふっくらとしたお腹の肉付きなども、とてもうまく表現されています。
Rosenthal "Snake Charmer"
Model#442、B. Boess作、1929年(First Made 1916)、H20cm上の作品#358と同系統の女蛇遣いフィギュアです。色遣いがとてもよく似ています。
この作品は人気が高かったらしく、割と良く目にしますし絵付けのバリエーションも数種類あり、顔が描かれているものも多いです。このブルーを基調とした絵付けは、オリジナルに近いものです。
#358とは2年しか制作年代は離れていないのに、型番はずいぶん増加しています。この時期たくさんのフィギュアが作られたことがうかがえます。
Rosenthal "Anita"
Model#201(Bahnhof工房)、D. Charol作、1932年(First Made 1920s)、H18cmロシア出身の女性アーティストCharolの典型的なデコフィギュア。ダンスの一瞬の動きを良くとらえています。当時の有名なダンサーなのでしょうか、キャバレーでレビューを見るような気持ちにさせてくれますね。
このフィギュアは高さ18cmと小さいのですが、もう少し大きいバージョンが一般的です。小さいわりに、顔の絵付けがしっかりしています。
Rosenthal "Chinesischer Hund"
Model#69(Bahnhof工房)、R. Foerster作、1923年、H5cmRichard Foersterは、ローゼンタール以前はパリやミュンヘンで活動していたアーティストです。ちょっとキッチュな作風で主に人物フィギュアを制作しています。
"Chinesischer Hund(中国犬)"というタイトルですが、狆でしょうか。Kuesterのグロテスクアニマルを彷彿とさせる造形と絵付けですが、モデル番号から考えてこちらの方が先だと思われます。
この作品にKuesterがヒントを得てグロテスクアニマルシリーズを制作したのかどうか、興味深いところです。
Rosenthal "Pierrette"
Model#180(Bahnhof工房)、D. Charol作、1921年、H30cm上記Charolの可愛らしい女性ピエロフィギュア。顔の絵付けがとてもおしゃれでデコっぽいですね。
オレンジと緑と台座には黒という、強烈な色の組み合わせもデコ風です。
Rosenthal "Dancer"
Model#204(Bahnhof工房)、D. Charol作、1924年、H24cmこちらもCharol作の可愛らしいダンサーです。衣装のお花でしょうか、黄色がアクセントになっていますね。
このフィギュアの顔のアップはご勘弁を…左右の目の大きさが違うので、1mくらい離れて鑑賞せざるを得ません。(泣)そこさえなければ完璧なのに、残念! やはりフィギュアの絵付けは顔ですね。
Rosenthal "Yvonne"
Model#206(Bahnhof工房)、D. Charol作、1925年、H30cmやはりCharol作の可愛らしいレビューガールです。イヴォンヌという名前だったのでしょう。
釉下彩と上絵付けが巧みに組み合わされています。顔もとても可愛らしく描かれていて、見る角度によって表情を変えてくれます。当時のキャバレーなどの華やかな様子が目に浮かぶような作品です。
Rosenthal "Amazon"
Model#519、A. Grath作、1960年頃(First Made 1918)、H25cm躍動感あふれる女戦士(Amazon)。ヌード女性と動物という取り合わせはこの時期の流行だったようです。
ローゼンタールは動物のフィギュアも素晴らしいのですが、この作品では人物と動物の造形の確かさ、美しさを同時に堪能できます。
Rosenthal "Pierrot"
Model#549、C. Holzer-Defanti作、1919年、H14cm, W30cmデファンティはダンサーやピエロのフィギュアを多く作っています。
この作品もそうですが、彼のフィギュアでは目がぼんやりと絵付けされているものが多いです。これがどこを見ているのか分からない妖しさを醸しています。
Rosenthal "Herald of Spring"
Model#657、A. Caasmann作、1923年、H11.3cm「春の使者」というタイトル通りのフィギュアです。花束を抱えた妖精でしょうか、釉下彩の優しい色使いが春らしさをよく表現しています。
Caasmannはおとぎ話などをモティーフにして子供の小さなフィギュアを多く作っていますが、子供と(ボリュームのある)花という取り合わせはユーゲントシュティル期に特に好まれたものです。
Rosenthal "Moon Dancer"
Model#698、B. Boess作、1923年、W28cm, H11cm釉下彩の淡いグラデーションが美しい作品。
当時腕を広げれば羽のように見える衣装のダンスが流行っていたようで、他窯でも同じようなモティーフのフィギュアがたくさん作られています。
Rosenthal "Woman Drinking"
Model#752、E. Wenck作、1938年(First Made 1924)、H14.5cm女性のやわらかな体の曲線がとてもうまく表現されています。この時期ずいぶんヌードのフィギュアは作られていますが、他の民間窯ではこんなに重量感のあるやわらかな曲線を出せていません。
Rosenthal "Egyptian Dancer"
Model#757、R. Marcuse作、1930年(First Made 1925)、H26cmフィギュア部門の主力アーティスト、Marcuseの作品。エジプトのヒエログリフから抜け出してきたようなポーズの、エキゾチックなダンサーです。
何より動きのある確かな造形が素晴らしい。顔の絵付けもよく描けています。
フィギュアを安定して立たせるために、木の切り株や台などをあしらう工夫を下半身に施すことも多いのですが、この作品はきちんと2本足だけで立っており、造形、焼成技術のレベルが分かります。
Rosenthal "Pierrot Lying"
Model#251(Bahnhof工房)、D. Charol作、1928年、H16cmローゼンタールでピエロのフィギュアを多数作ったCharol。彼女の作るピエロは(悲しげなメーキャップを別にしても)いずれも物悲しさを漂わせています。
故郷を離れて活動する彼女の孤独を反映しているのでしょうか。
Rosenthal "Karsawina"
Model#344(Bahnhof工房)、C. H. Defanti作、1928年、H31cmこの頃流行していたロシア・バレエの売れっ子プリマ、タマラ・カルサヴィナをモデルにしたフィギュア。おそらく「シェヘラザード」の衣装ではないかと思われます。
絵付けが少し雑なのが残念ですが、少年のような顔立ちなのに何ともいえず色気があります。彼女の腰掛けている台座もオウムをかたどったアールデコの造形で、見所です。
Rosenthal "Salambo"
Model#956、G. Oppel作、1935年(First Made 1927)、H22cmアールデコ・フィギュアのモティーフとして好んで取り上げられた女性蛇使い。ローゼンタールでもいろんなアーティストが蛇使いフィギュアを作りました。
この作品は顔の絵付けが細かく、見る角度によって妖艶にも清楚にも表情を変えてくれます。多分絵付け師は#1174のフィギュアと同じ(底にサインがあるのですが読めない....)。
Rosenthal "Player Dancer"
Model#961、G. Oppel作、1929年(First Made 1927)、H24cmこれもOppel作の、エジプト風フィギュア。顔立ちもエジプトっぽく絵付けされています。
上の"Salambo"とほぼ同時期に作られたものだけに、雰囲気が共通しています。特に足のポーズなんかは、部品を使いまわしたのかな?と思えるほど似ています。
"Salambo""Player Dancer"とも、少し後にそれぞれ#1508,#1505として台座を換えてもう一度作られています。
Rosenthal "Summer"
Model#982、G. Schliepstein作、1932年(First Made 1928)、18cmその卓越した曲面センスと構築力で、素晴らしいデコ・フィギュアを作ったGerhard Schliepsteinの、「春」「夏」「秋」「冬」と4体シリーズから、「夏」です。
夏の象徴である麦を抱えた女性という古典的なモティーフを見事にモダンに解釈しています。Schliepsteinは、KPMなどでも素晴らしい作品を残しています。
Rosenthal "Autumn"
Model#983、G. Schliepstein作、1939年(First Made 1928)、18cm上と同じく四季シリーズから、「秋」です。
秋の実りの作物(特に葡萄)が盛られた籠を手にした女性です。計算され尽くした美しいポーズが堪能できます。
Rosenthal "Winter"
Model#984、G. Schliepstein作、1935年(First Made 1928)、18cm上と同じく四季シリーズから、「冬」です。
彼のフィギュアは白磁でこそ、曲面のシャープさや陰影の美しさが堪能できます。寒風に思わず襟を合わせる女性を、本当にモダンに表現していますね。側面の衣服の湾曲など構成が素晴らしいです。
Rosenthal "Windhund"
Model#1114、G. Schliepstein作、1935年(First Made 1930)、18cmSchliepsteinは動物も制作しています。デフォルメに彼の本領があることは間違いないのですが、写実的な動物フィギュアもなかなかの出来です。この作品も犬はかなり写実的に作られており、2匹を支える台座がデコ風です。
2匹のハウンド犬を巧みに配することでデコらしい直線的な躍動感を表現しており、どこから見てもスキのない造形です。
Rosenthal "Heron"
Model#0686、G. Schliepstein作、1923年、13.5cmモデル番号も若く、Schliepsteinがローゼンタールに所属していた最初期に制作されたもの。ブロンズで同じ作品があるので、同じ型を使ったものでしょうか。
彼のデフォルメはこのようなしっかりした基礎から生まれているのが実感できます。
釉下彩の絵付けも素晴らしく、まるで生きているかのような鷺です。
Rosenthal "Dream Dancer"
Model#1116、G. Oppel作、1932年(First Made 1927)、24cmこれもOppel作。Dream Dancerというタイトル通り?夢遊病のようなキョンシーのようなフィギュア。頭から体にまとわりつくスカーフが、フィギュアに動きを与えています。
それにしてもこの時代、このようなエロティックなダンスが流行していたのでしょうか?
Rosenthal "Oriental Dancer"
Model#1174、C. Weiss作、1933年(First Made 1932)、H27cm女性アーティスト、Clair Weissの作品。金彩とポーズが非常に美しいです。Weissはきっとおしゃれなモダンガールだったのでしょう、とてもファッショナブルなフィギュアをローゼンタールで作っています。
私がローゼンタールのフィギュアにはまるきっかけとなった作品。
Rosenthal "Dancer"
Model#1600、H. Moshage作、1948年(First Made 1936)、H30cmBisque(素焼き)のフィギュア。素焼きが女性の体の柔らかさやぬくもりを表現しています。モノクロ写真のような味わいがあります。
猿 "Tarzan":Model#798、H9.5cm
馬 "Bucephalus":Model#799、H7.5cm
犬 "Ueberdackel":Model#803、H2.5cm
鷺(右) "Reiher":Model#915、H7cm
マラブー(左) "Marabu":Model#918、H6.3cmRosenthal "Grotesque Animal"
H. Kuester作、1920年代動物をデコ風にデフォルメした、これぞローゼンタール!という非常にユニークなシリーズ。
レゾネによると、それぞれ馬、猫、イタチ?、犬(ケルベロス、冥界の番犬)、犬(ダックスフンド)、猿、鳥らしいです。猫はなんとなく赤塚不二夫の「ウナギイヌ」に似てません?
これが1920年代に作られたなんて信じられないほどカラフルで斬新です。作者のHans Kuesterはローゼンタールの中でも独特な造形が際立つ個性的な作家です。
他にもペンギン、象、アヒルなど全23点ほどあるのですが、人気が高くてほとんどお目にかかれません。
Rosenthal "Sheep"
Model#1006、H. Kuester作、1928年、H12.5cmグロテスクアニマルシリーズの作者Kuesterの素晴らしい造形力が堪能できる羊のフィギュアです。
どっしりとした存在感、羊毛の重い質感表現は見事です!
Rosenthal "Marabu" Bookend
Model#1011、H. Kuester作、1928年、H19cmこのあたりの型番でKuesterは動物を連作しており、この作品は本立てになっています。Marabuはほとんど動かない鳥らしいのですが、この時代多くの窯・作家によって多数フィギュアが制作されています。
中でもこれはKuesterの造形と青みがかったダークグレイの色合いもあって、不気味な迫力では群を抜いています。